今日の手術は下顎のセットバックでした。
下顎を引っ込める場合の患者様の症状は、受け口の場合やシャクレ顔の場合、反対咬合や開咬(オープンバイト)の場合など、いろいろな症状に適応している手術方法です。
下あごセットバック手術には、
下顎枝矢状分割骨切り後退術(通称SSRO)
下顎枝垂直分割骨切り後退術(通称IVRO)
下顎歯槽骨分節骨切り後退術(通称ASO)
があります。
どの手術方法が患者様に適しているのか?患者様自身はなかなかわかりにくいものです。
診察をさせていただいた際に患者様の状態や症状、ご希望に合わせて術式をアドバイスしています。
まずはお話を聞くだけでも知識になり、ご自身の判断の糧になります。
ご希望の手術の直接的なお話でなくても、希望じゃない手術を勧められた‼︎と思わないで聞いていただけたらなと思いながら、ご説明をしています。
患者様のご希望の術式をできるだけ叶える様にしています。
今回は下顎歯槽骨分節骨切り後退術(ASO)です。
まずは手術前の状態です。
この患者様は完全に反対咬合ですね。
しかも少し下顎が右にずれています。この様な状態でも下顎歯槽骨分節骨切り後退術(ASO)ですごく綺麗に治ります。
後ろに下げるために切除する骨を分割(骨切り)します。
縦に骨切りをした後に
横(水平)に骨切りします。綺麗に骨切り(分割)ができたら、こんな感じで「パカっ」て骨が外れます。
骨の後ろには、舌の内側の筋肉、おとがい舌筋の筋層が見えています。この下におとがい舌骨筋があり、顎の骨の底辺を作るように顎舌骨筋があります。
あとは手術前に模型で手術した(モデルサージェリー)通りに収まるように、骨の細かい突起や凸凹をトリミング(調整)したら、固定します。
今回の固定材料はステンレスワイヤーを使用します。十分に綺麗に固定ができます。固定が緩い、ズレる、安定しないと言う先生がいますが、適材適所と鋼線テクニックです。
ワイヤー固定は、私の師匠の一人である済生会神奈川県病院の太田舜先生に伝授をして頂きました。
今ではもう、ワイヤー固定がまともにできる先生はほとんどいなくなてしまったので、貴重な経験をさせて頂いたことをいつも感謝をしています。
ところで、今回の固定の際のポイントは、母床骨と可動骨片のステップの位置です。このステップによって、おとがい唇溝が形成できます。
かわいいアゴができるか否かのポイントです。
矯正歯科学的なポイントで言うところの「ポイントB」と言う点です。
矯正歯科治療や顎変形省治療、外科矯正では、噛み合わせの良し悪しを優先してしまい、顔貌の変化に気を使わない場合が多いのですが、私はセットバック手術においては、噛み合わせと同じくらい見た目の変化は大切だと思っています。