ボツリヌス治療
||| ページ内目次
ボツリヌス治療の部位別治療プラン
部位別治療の実際
歯ぎしり、食いしばり、クレンチング、ブラキシズムの予防と改善
あごや顔のコリの治療には、非外科的な治療方法として、最近ではもっとも簡易的で、副反応や副作用が少なく、症状の緩和が確実なニューロトキシン注射療法(ボトックス®)があります。
その他の治療方法には、歯ぎしりや食いしばりの生活習慣の是正や指導、マウスピース療法(咬合挙上)、咬合治療(嚙み合わせ治療)、詰め物かぶせものの修正、あご関節症治療、筋肉の緊張をおこすような生活習慣の軽減、マッサージや鍼灸治療、温湿布、音波療法、高周波治療、筋弛緩剤などの内服薬による治療があります。
治療法1. 小顔のための咬筋肥大への治療
咬筋(エラ筋)が大きく肥大すると、顔が大きく見えます。
それでは、なぜ顔が大きく見えるようになるのでしょうか?咬筋がエラについているからです。
それでは、咬筋を大きくする原因は何でしょうか?歯ぎしりや食いしばりです。
歯ぎしりや食いしばりは、無意識の筋トレによって咬筋を大きくしてしまうからです。
小顔治療は咬筋(エラ筋)や側頭筋が大きくなってしまった原因を探り、適切に顔を小さくすることが治療のポイントです。
小顔のための咬筋肥大への治療のポイント
手術に代わるダウンタイムが少ない治療
- 咬筋を大きくしてしまった、歯ぎしりや食いしばりの生活習慣の是正や指導
- マウスピース療法(咬合挙上)
- 顎関節症治療
- 筋肉の緊張をおこすような生活習慣の軽減
- 咬筋のマッサージや鍼灸治療
- 咬筋の温湿布
- 咬筋の音波療法
- 咬筋の高周波治療
- 筋弛緩剤などの内服薬
治療法2. 顎のコリを解消するための治療
顎のコリの原因は顎の筋肉です。
あごの筋肉にはお口を開けたり、咬み締めたり、お口を閉じたりするために必要な機能的な役割を果たす咀嚼筋があります。
顎のコリの原因は主に咀嚼筋である、咬筋や側頭筋、内側翼突筋や外側翼突筋です。
顎のコリは咀嚼筋である咬筋や側頭筋が肥大化し、むくみを伴い顔が大きくなります。
顎のコリは食事や会話などの機能的な不自由さと、肥大化した大きな顔としての美容的な両面が患者様の悩みです。
1. 顎のコリの治療(エラボト)のポイント
- 食いしばりや歯ぎしりなどの口腔習癖の緩和
- 顎のコリによる筋肉疲労などの機能的
- 神経的な改善
2. 頭痛の原因である側頭筋の筋肉を緩める治療のポイント
- 顎のコリ、食いしばり、ブラキシズム、歯ぎしり、クレンチングの症状が改善
- 側頭筋のスパスム(筋肉や筋膜の痙攣)による頭痛の軽減
- MPD症状(筋膜のハリやコリ)の緩和、改善
治療法3. 顔のコリを解消するための治療
顔の凝りの原因は顔の筋肉です。
顔の筋肉には、泣いたり、笑ったり、怒ったり、悲しんだり、主に表情を作るための顔面筋(表情筋)があります。顔のコリの原因は顔面筋、表情筋が原因です。顔のコリは症状が悪化すると、お顔の疲労感や倦怠感だけでなく、見た目として表情のかたさ、ひきつれを引き起こします。
肩や足が凝ったときの「肩がパンパン」「足がパンパン」と同じ状況が顔にも起こります。
肩や足や腰はハリ感が出ても見た目が気になるという方はいらっしゃいませんが、顔のこりは表情の硬さ、違和感や見た目の美しさに直結します。そこで、美容外科クリニックを受診される患者様が多いのですが、顔のコリの原因を突きとめることが大切です。
カンファークリニックでは、原因を追究し、原因に応じた治療をおこなっています。
1. 口のしわを解消するための治療のポイント
- 顔のコリがない
- 上口唇のしわにはFiller療法やCell-free療法がfirst choice
- BTX-Aは少量を浅い層に
- BTXとFillerの同時注射はしない
口の周りとは、鼻の下、口角、くちびる周りをさします。
顔のコリである口唇周囲の縦しわ(ちりめんじわ)は、かみ合わせ、歯の欠損状態や歯槽骨の吸収状態と口輪筋を中心とした、口周囲の顔面筋の緊張やこりの表れであり、BTX治療が良く効きます。
2. 梅干ししわを解消するための治療のポイント
- 咬合高径の低下している患者や遊離端欠損症例にも有効
- フェイスライン、下顎骨ラインが明瞭に改善
顎の先端にできる有名なしわの1つに「梅干し」があります。
この梅干し、実はシワではなく、オトガイ筋という顎先にある筋肉が過剰に動いた結果による「力こぶ」です。カンファークリニックでは、BTX-A治療によって活動筋の緊張緩和を取り除く程度の製剤濃度を適応しています。
3. 口角下垂と口角挙上のポイント
- 見た目の改善、美容液改善を求め、口角を上げたい患者様にも適応している治療方法
口角の下垂は、口もとの筋肉が凝って口角が下がってしまった顔のコリの症状です。
直接的な原因は口角下制筋(三角筋)の過緊張(コリ)が原因です。
この症状を単なる加齢現象や見た目だけの口角の下垂と判断しないで、口角下制筋の過剰な緊張状態を生じさせている顎のコリとして原因を追究することが大切です。
A型ボツリヌス製剤(ボツリヌストキシン)(ボトックス®など)の概要
小顔:顔コリ:顎のコリの概論
顔にはたくさんの筋肉がありますが、その筋肉は大きく分けて2種類に分けることができます。
1つは骨から始まって皮膚に終わる皮筋です。もう1つは骨から始まって骨に終わる骨格筋です。皮筋はとくに表情筋としてよく知られています。表情筋はとても薄い筋肉で、目の周りの眼輪筋、口の周りの口輪筋、口角を上げたり下げたりする口角下制筋や口角挙筋、笑筋などがあり、顔のマッサージやエステ、顔の筋トレの分野では有名です。美的で見た目に関与する筋肉です。
一方、顔にある骨格筋はお口を閉じたり、開けたり、咬んだりするために動く機能的な筋肉で咀嚼筋と言います。咀嚼筋は咬筋がもっとも有名です。小顔を希望されてボツリヌス製剤を注射する筋肉が咬筋です。顔の骨格筋の中では、一番なじみがある咀嚼筋の1つといえます。小顔のためのボツリヌス注射を通称では、「エラボト」と言われていますが、エラにある筋肉が咬筋です。
このように顔は皮筋と骨格筋が協調しバランスを取りながら、頭や口、あご、顔の位置を変化させて繊細な表情を作ったり、嚙み合わせたり、飲み込んだり、咀嚼したり口腔機能をおこなうと同時に口角を上げて笑ったり、顔をしかめたり、眉毛をひそめたり、頬を膨らませて怒ったり、あごにしわを寄せて困ったり、顔の表情を変化させています。
この2種類の異なる役割を持った筋肉が協調する動きがあるために、お顔の表情を診察する時にお口の機能が大切である理由です。なぜなら口とアゴが顔の中で唯一大きく動く役割があるからです。
カンファークリニックでは、A型ボツリヌス製剤である、ボツリヌストキシン(商品名:ボトックス®がとても有名です)を用いたニューロトキシン治療をおこなっています。
ニューロトキシンとは、ボツリヌストキシンのような神経系に作用する薬剤の総称です。カンファークリニックでは、お口の機能性とお顔の整容性のバランスを診察しながら、お口の機能の向上と、見た目、美容治療をおこない、健康で美しく、しわやタルミのなくなる丁寧な診療を行っています。
カンファークリニックでおこなう治療方法は、美容外科や、美容皮膚科でおこなう、見た目だけの改善や、主観的なしわやたるみの改善の治療だけではなく、咬合機能である、嚙み合わせ、顎関節の動き方に関係した顎のゆがみ、歯が抜けたままの状態が原因のしわやたるみ、歯ぎしりや食いしばりが原因の顔の大きさ、顔の左右差への影響、顔の筋肉が原因のガミースマイル、かみ合わせや骨格、口ゴボが原因のあご先の梅干し、顔の大きさや顔の細さ、頬骨のでっぱりや頬のこけ方など、お口の機能に関係しているお顔の見た目を改善する治療を行っています。
もちろん年齢や加齢現象にともなう顔面表情筋等のしわやたるみを合わせておこなっています。
ボツリヌストキシン(ボトックス®)治療の難しい点
1. 患者様が希望される結果を導く原因の把握
2. しわやたるみの原因筋肉の把握
3. 目指した筋肉に使用するボトックス濃度の決定(さじ加減)
4. ボツリヌス(BTX)薬剤の拡散、分布、漏洩の予測(副作用、副反応の低減)
カンファークリニックでは、1回の治療で欲張らず、想定外の治療効果を予想しつつ、患者様にとって不要な副反応にならない様に、患者様の希望に応じた治療に努めています。使用する薬剤の濃度や適応する部分の筋肉の厚み、使用する針の深度による治療成績、適応する部位の解剖学的な特徴を検討したうえで治療をおこなっています。
ボツリヌス治療の考え方
顔にできるしわやたるみは、ボツリヌストキシン治療がとても効果的な症状がありますが、その症状の原因を検討する必要があります。薬剤を生体に適応するのですから、しわやたるみも病気の治療と同じように「原因」を検討することはとても大切です。そして、このしわやタルミの原因を探すために大切なことは、「口腔機能」です。顔のしわやタルミの症状は今までは、老化であるアンチエイジングにスポットが当たっていましたし、今でも老化はしわやたるみの主たる原因として大きく関与していると考えられています。
しかし、近年の研究では、その主原因で大切なことは口腔機能と言われています。口腔機能と顔のしわの関係はイメージが付きにくいと思いますので、わかりやすい例でご説明を致します。
例えば、足を骨折した患者様が、6か月くらいギプスをつけた生活をした場合、骨折した足はとても細くなって、動きにくくなります。これは使わなくなった筋肉や靭帯が委縮し、小さくなり、たるみ、動かさなかったことで関節が固くなるからです。
これらの症状を「廃用萎縮」と言います。足は細くなって、立つことさえできなくなり、しわも出来ています。一般的には、患者様立ち上がることや歩くことを元に戻したいと思い、足のしわを気にしません。この場合のように、身体の機能性が低下すると、筋肉や靭帯の廃用性の萎縮が起こり、しわやたるみになることは古くから知られています。
では、同じような現象が顔に起こるとどうなるでしょうか?
- 足が細くなる→顔がこける
- 足にしわができる→顔にしわができる
顔も顎の動き、噛み合わせの良し悪しによって、機能の良し悪しが左右されます。合っていない入れ歯やかぶせもの、つめもの、悪い歯並び、不正咬合、嚙み合わせは、機能低下がもたらす顔の見た目に影響します。
カンファークリニックのボツリヌス治療
カンファークリニックでは、このような噛み合わせの不都合から発生する口もと周囲のしわやたるみ、小顔、ガミースマイルの症状に対して、ボツリヌス治療をおこなっています。
梅干ししわ、エラの肥大、ガミースマイル、目の下のたるみ、口周りのたるみ、大きな顔の原因は、顎位、咬合関係、顎関節、皮膚、口腔粘膜、脂肪、筋肉、靭帯組織が関係しています。とくに表情筋が伸びたり、縮んだりする機能性した場合や、嚙み合わせ筋が伸びたり縮んだりした状態をよく観察し診察することが大切です。顔のしわやタルミの原因となっている咀嚼筋や表情筋の過剰な動きは、あごや口の中の機能的な障害(かみ合わせや歯並び、顎の関節の動き、靭帯の伸び縮み)が原因して発現しています。
しわやたるみ、ガミースマイル、梅干ししわ、大きなお顔の原因となるような下あごの動き方、顎の位置の評価をすることが、治療するドクターの大切なスキルといえます。この点が顔と口もとの領域が、口腔の機能と密接に関係している見た目のバランスが必要といわれる所以(ゆえん)です。
例:顔が大きい→歯ぎしり、食いしばりが原因→咬筋が大きくなる→小顔治療
ボツリヌス治療の適応
カンファークリニックでは、エラボト、ガミボト、顎のコリ、顔コリ、ガミースマイル、梅干し、顔のしわやたるみ症状にたいして、ボツリヌス治療をおこなっています。そして顎の位置(顎位)、かみ合わせ(咬合位)、がく関節症(顎関節運動)によって出来てしまったしわやタルミ、大きな顔、ガミースマイル、梅干ししわ、顎のコリ(咀嚼筋、表情筋の過剰なのび、ちぢみ)によって出来る美容的、機能的な顔の症状をボツリヌストキシンを使用して治療をおこなっています。
顔のしわは、筋肉が動くからしわが出来るだけでなく、上下左右のあごの位置関係(顎位)、かみあわせ(咬合位)の位置や高さ(咬合高径)、あご関節症(顎運動)が原因となっている場合がたくさんあります。皮膚の厚みや伸び縮みの程度(伸展度)、粘膜の厚みや粘膜の伸び縮み(伸展度)、皮筋と口腔粘膜の位置関係、皮膚と口腔粘膜の位置関係、筋肉と皮膚の付着の程度、靭帯の伸び縮みの程度(伸展度)、脂肪の量や配置が複雑に絡み合って原因となり、顔にしわやタルミができます。この点が歯科口腔顎顔面外科としてボツリヌス治療をおこなう意義があるのです。
原因に応じた治療方法を提案
カンファークリニックでは、原因に応じた治療方法を提案しています。う蝕、歯周病、矯正歯科治療だけでなく、これらの診療から生じる、自覚症状、無自覚症状の顔のさまざまな症状に対して、積極的に治療しています。カンファークリニックのボツリヌス治療は、顔のしわやたるみ、形やコリ、小顔などを改善して、見た目を向上させ、患者様満足度の高い歯科口腔顎顔面外科治療に取り組んでいます。
ガミースマイル、大きな顔、梅干ししわ、顎のコリ顔のコリに対して、ボツリヌス治療を積極的かつ安全に行っていますが、ボツリヌス注射が適しない症状もあります。それは、筋肉以外の原因で、顎のコリやエラの肥大化、梅干ししわやガミースマイル、しわや溝が出来ている場合です。エラの骨の肥大化に対しては、エラ削り手術。かみ合わせやあごの形が原因の梅干ししわにはセットバック手術。歯ぐきが原因場合のガミースマイルには、歯冠長延長術をおこなっています。
カンファークリニックでは、一般歯科治療だけでなく、かみ合わせ(咬合関係)、噛み合わせの高さ(咬合高径)、あごの位置(顎位)、あご関節症(顎関節運動)などの機能的な面を診察して、患者様の症状に応じて、手術をして治す方法、手術をしないで治す方法を提案しています。
一般的なボツリヌス治療の禁忌症
- 神経筋接合部障害患者
- 妊婦、授乳婦
- 不妊治療中の男女
ボツリヌス治療の併用注意薬剤
筋弛緩剤
・アミノグリコシド系抗生物質
・d-ペニシラミン製剤
・クロロキン製剤
・シクロスポリン製剤
患者様の治療満足度の向上のためにできること
カンファークリニックでは、患者様が治療に満足されないことがないように、患者様の希望に沿う治療方法を選択することがドクターに必要なスキルであると考えています。
そこで患者様の希望をしっかりと把握し、ボツリヌストキシン製剤のメリットとデメリットの説明に専念しています。患者様自身の自己決定を尊重し、判断して頂くための知識の提供、時間的、空間的な余裕を大切にしています。
カンファークリニックのボツリヌス治療(BTX)は、特に65歳以上の患者様に対しては予想以上の強い反応や、強い効果が出る場合や、効果が出るまでに時間がかかる場合もあるため細心の注意をおこなって治療をしています。初回治療は低濃度、少量、小範囲にとどめて、十分に経過観察をおこないながら治療を進めています。安心してご来院なさってください。
丁寧な診察で原因を正確に診断
顎のコリや顔のコリ、食いしばりや歯ぎしりは、原因をしっかりと診察しています。筋肉には異常な伸び縮みがあります。あごの位置(顎位)や噛み合わせ(咬合)による噛み合わせの治療で改善できる症状に対しては、ボツリヌストキシン(BTX)治療は補助的手段、対症療法手段として位置付け最小限の治療範囲にとどめています。また、筋膜や骨膜に至るような症状の場合、ボツリヌス(BTX)治療は特に慎重に診察し、注射をおこなっています。
手術によって改善が可能な場合は手術の適否も含めてご説明をしておりますので、安心して受診、ご相談をして頂くことが出来ます。
カンファークリニックでは、隣接領域の知識や技術を常にアップデートし、隣接領域のドクターとの連携をおこないながら、治療に取り組んでいます。
治療時の疼痛対策について
カンファークリニックでは、注射の際に患者様の痛み、苦痛を取り除くために下記の工夫をおこなっています。
- 表面麻酔の工夫
- 痛くない針の使用
- アイスパックによる冷罨法
- 自動注射器の使用
ボツリヌス注射(BTX治療)の痛みについて
① 針が皮膚に刺さる瞬間の痛み
② 薬剤を注入するときの痛み
①に対しては、ペンレステープ®などの高濃度リドカインテープの局所麻酔剤やEMLAクリーム®などの高濃度リドカイン軟膏の局所麻酔剤を前処置として併用しており、無痛注射で診療をおこなっております。
また、針が刺さる時の痛みを軽くするために、使用する針をものすごく細く痛くない針を使用しています。この針は、蚊に刺されても痛くないその原理を応用した特殊な針です。
さらに注射直前のアイスパックを使用した注射部位の冷却も併用し、痛みの軽減だけでなく、皮内出血予防をおこなっています。②の薬剤を注入する時の痛みの軽減には、自動注入器を使用して皮膚や筋肉にかかる圧力を自動調整する専用インジェクター(自動注射器)を使用し、注入速度のコントロールをしています。
ボツリヌストキシン治療
ボツリヌストキシンとは
A型ボツリヌス毒素(BTX-A)製剤は、精製された神経毒素複合体でClostridium botulinumによる発酵過程で生成される7種類の神経毒素血清型のうち、A型を単離精製したものです。A型の薬剤の品質は、A型~G型の7種類の神経毒素血清型のなかでもっともよい品質であり、薬剤の歴史、作用機序、使用頻度などについて、もっとも解明が進んでいる安全な治療製剤です。
少し難しいお話になりますが、ボツリヌストキシンがどのように効くのかご説明いたします。全身の筋肉の中でも、自分の意志によって動かすことが出来る筋肉(随意筋)は神経と筋肉が接している部分(神経筋接合部)で、筋肉を動かすための電気信号が(活動電位)が発生します。
この活動電位が神経線維(電線)を流れるのですが、活動電位がシナプス(高速道路のサービスエリアみたいなところ)に到達し、そのサービスエリア(シナプス)から筋肉を動かすための液体(アセチルコリン)が神経の末端である神経終末に放出されると、筋線維側の受け皿(ニコチン受容体)に筋肉を動かすための液体(アセチルコリン)が付着(融合)することによって筋肉の線維が収縮(縮まる)します。これが、筋肉が伸びたり縮んだりしている体の中の働きです。
A型ボツリヌス製剤は神経毒素製剤であり、筋肉に注射をしていますが、実際には神経に利いています。お薬はジスルフィド結合という特殊な結合をした重鎖と軽鎖からできた2本鎖のポリペプチドです。A型ボツリヌス製剤が細胞内に入ると、SNAP-25を切断することによりアセチルコリンが出ないようにします。そして、アセチルコリンが出なくなった結果、神経と筋肉の連絡が途絶えて、筋肉がゆるみます。
この作用を応用して、しわやタルミ、小顔の治療に活用されています。実際には、心筋梗塞や脳梗塞、くも膜下出血などの頭蓋内出血疾患の術後の筋肉拘縮症状の緩和、消化器外科や肛門科などの消化器官の過剰運動の抑制、尿失禁などの泌尿器科領域における過剰な活動性の膀胱など、疾患治療の分野で安全な治療薬として活用されています。
作用機序
ボツリヌストキシンの分子はジスルフィド結合と言う特殊な結合をした重鎖(太いチェーン)と軽鎖(細いチェーン)でできている分子量が約15万の2本のらせん状のポリペプチドで出来ています。そして、細胞のなかにあるSNAP-25が、この軽鎖(細いチェーン)によって切断されることで、一時的に神経と筋肉の連絡を遮断させて、神経の末端の部分のコリン作動性神経終末にだけに効果を発生するので、全身の副作用がありません。
ボツリヌス(BTX)製剤を、治療の目的としている臓器や部位の神経の近くに注入すると、その目的とした部位だけに一時的(といっても、3か月程度)に神経の伝達を遮断する効果を示します。この点がボツリヌス製剤を使用するもっとも基礎的で、大切な知識です。ですので症状の原因を突きとめることがとても大切です。美容目的だけでなく、内科や外科、眼科、泌尿器科など、様々な診療科のドクターが、病気の治療法として日々研究し、応用することで、患者様の病態やQOLの向上に寄与している製剤と言えます。
製剤の歴史
ボツリヌス製剤(BTX)製剤を注射することによって得られる治療としての有用性や有益性
① 局部部分への適切な投与経路や投与手段
② 薬剤の浸透性としてのコリン作動性ニューロン(神経の末端)への浸透
このため、適正用量を用いれば、全身性副作用の発生リスクを最小限に抑制しながら、治療部位では一定期間(3か月から6か月程度)の神経伝達遮断効果や神経の活性消失、神経運動の低下効果があります。世界中で最初のボツリヌス製剤(BTX製剤)であるBTX-A(BOTOX® Allergan社)は斜視や良性本態性眼瞼痙攣、第Ⅶ脳神経障害治療薬として、1989年に米国で承認されました。それ以降は運動障害をはじめとする諸種の疾患治療における安全性と有効性が認められ,現在では世界各国で多くの適応症が承認されています。
※ここで適応承認とは、公的な健康保険が適用できるということではありません。
その後、A型ボツリヌストキシン(BTX-A)複合体製剤(Dysport®Ipsen社)が1991年に英国で承認されました。また、B型ボツリヌストキシン(BTX-B)複合体製剤(Myobloc®Elan社)の痙性斜頸患者に対する使用も、米国FDAによって承認されました。これら3製品はどれもボツリヌス製剤(BTX神経毒素製剤)ですが、用法、用量、有効性、安全性の面で異なっていて、用量や比率、使い方、適応症例で単純換算ができる製剤ではないとされています。
現在では、世界で300種類以上のたくさんの製剤が販売されていますが、同じような製剤でも、安易に用法や容量、濃度を変更するべきではなく、多くの治療経験を基にしたドクター自身による、適切な濃度や注射部位の決定が必要です。
ボツリヌス(BTX)療法は、美容医療だけでなく、疾患治療に対して、適正に投与すれば、製剤の安全性は明らかにされてきた、安全な製剤です。もっとも多く認められる副作用、副反応は、治療部位の筋肉の過度の筋力低下(効き過ぎ)と、注入部位からの神経毒素の局所拡散による近傍筋の筋力低下(周囲への漏れ、漏洩)です。これらの副作用、副反応はドクターのは少しの注意で予防が可能です。
※漏洩による副作用は、関係のない筋肉への薬の到達による副作用です。
カンファークリニックでは細心の注意を図っています。
BTX製剤の用法、用量は、mlやccではなく、IU(国際単位)が正式な表記です。BTXの1IU(単位)はマウスに対する腹腔内投与での50%致死量(LD50)であると定義されています。
使用方法
ボツリヌス製剤を使用した、ニューロトキシン治療はいろいろな診療科によって使用されています。
2024年現在、日本国内のすべての診療において、保険診療に使用することはできません。
カンファークリニックでは歯ぎしり(ブラキシズム)、食いしばり(クレンチング)顔のコリ、顎のコリ、咀嚼筋のMPD、顎関節症の治療や、顔の美容的、整容的、見た目の改善治療として、口唇周囲、口唇縦しわ、ガミースマイル、鼻唇溝(ほうれい線)、口角下垂、口角挙上、マリオネットライン、オトガイ横しわ(メンターリス)、梅干ししわ,小顔(咬筋)治療をおこなっています。
これらの症状は口腔顎顔面の機能の低下や変化によって顔に生じた症状です。口とあごと顔は一体のものです。ボツリヌストキシンの治療がとても効果的な部位や症状が数多くあります。ボツリヌストキシン(BTX)治療は治療をする部位の原因や診断、靭帯や筋肉、脂肪、しわやタルミの解剖学を熟知していることが大切です。顔には骨から始まって骨に付く骨格筋(咀嚼筋)と骨から始まって皮膚に付く皮筋(表情筋)が混在しています。
カンファークリニックでは、治そうとしている症状がどちらの筋肉なのか、しっかりと診察し診断をしたうえで、適正な薬剤や濃度を決定しています。とくに顔面表情筋の解剖学は複雑です。筋膜で隔たれている顔面骨格筋とは違い、顔面表情筋のそれぞれの筋肉は、筋肉同士が複雑に絡み合っています。一つの表情筋への治療は、他の異なる筋肉に影響を及ぼします。さらに口腔、あごの機能や動きに伴って変化します。
カンファークリニックでは、患者様のご希望に沿った顔の諸症状を把握し、安全かつ患者様が期待する治療が提供できるように知識、技術、解剖学を完全に理解したドクターが担当しています。
ボツリヌス治療のコラム
BTX製剤は分子量が15万です。
とても大きいので、皮膚科などで使用する軟膏のように塗っただけでは皮膚から吸収できません。分子量が小さければ、ボツリヌス製剤を塗るだけで皮膚から吸収することが出来ます。
細胞間の結合を考えるとボツリヌス製剤の分子量が80~120くらいであれば、軟膏製剤の様に皮膚から吸収します。
種類
ニューロトキシン製剤、ボツリヌス製剤にはたくさんの種類があります。
世界中で使用されている、安全で、主要な製剤をまとめています。
・ BOTOX®(allagan)
世界91ヵ国で承認を得ている、世界標準(スタンダード)A型ボツリヌス毒素製剤。1989年に米国で医薬品としてのFDAの承認を取得しています。2009年には日本国内で、眉間の表情じわに適応承認を得ている。(保険診療ができるわけではありません。)
・Dysport(Ipsen Biopharm)UK
欧州で広く普及している製剤。CE取得済み。組織内拡散が他の製剤と異なります。
・Regenox(Hans biomed)Korea
KFDAの認可取得製剤(後発医薬品)
・Neuronox(Medy-Tox社)Korea
KFDA認可取得製剤。27ヵ国で承認を取得している韓国屈指の製剤です。30ヵ国で承認申請中の世界的なブランドになりました。50単位、100単位、200単位製剤があります。
・Meditoxin(Medy-Tox社)Korea
KFDA認可取得製剤。
・Xeomin、BOCOUTURE(Merz)Germany
FDA認可取得済み製剤。血球凝集素タンパク質の混入が少ないために抗体ができにくく、アレルギー反応が少ないという特徴がある。
・Nabota(daewoong)Korea
韓国内最大手製薬会社製。
・BOTLAX
BTX製剤の取り扱いと溶解手順
A型ボツリヌス毒素は生物兵器として使用されていた神経毒素です。このお薬の取り扱いには十分な注意が必要なため、安全な管理をおこなっているクリニック、病院での診療をおすすめします。
また、カンファークリニックでは、使用後の廃棄も安全に行っています。
1. 製剤の保存方法
製剤の活性度、新鮮度、薬液の濃度に応じた適正な効果を出すためには、5℃以下の冷所保存が推奨されている製剤です。溶かした製剤の薬液の効力は一週間ほどで効果が減るとの報告や、溶かしてから後、3か月後も溶かした時と同じ効力が保たれているとの報告もあります。
カンファークリニックでは、薬剤の効果を最大限に発揮させるために、薬剤は使用する日に溶かしています。
2.製剤の溶かし方
ボツリヌス製剤は部位や状態、症例、疾患によって適応する濃度は異なります。濃度調整は製剤の拡散や拡がり方を解剖学的に考慮し、目的に適した生理食塩水で溶解しています。
美容クリニックの広告にあるボトックス1本〇〇円や1ml〇〇円という表記の場合、薬液濃度が定かではありません。果汁100%のジュース100mlと果汁10%のジュース100mlの果汁濃度の違いと同じです。
担当するドクターと相談し、患者様のご希望や症状、状態に応じた「適正濃度」を使用してもらいましょう。溶解液量と溶かした後のボツリヌス(BTX)濃度の関係を示します。ここでは100単位製剤を溶かした場合をご説明します。
溶解液1.0mL:10.0単位/0.1mL
溶解液2.0mL:5.0単位/0.1mL
溶解液4.0mL:2.5単位/0.1mL
溶解液量が多いと拡散しやすくなり、濃度が薄くなり、持続時間は短くなります。逆に溶解液量が少ないほど、高濃度になり、よく効きますが、しっかりとした目的部位に注射をする技術がないと、効かないだけでなく、周囲の筋肉への拡散や副作用、副反応を生じてしまい、悲惨な結果になります。副作用や副反応を防止するためには適応する部位や症状に応じた溶かし方と注射する技術が必要です。
副作用、継発症、併発症
BTX-Aのヒトに対する致死量は3500単位から50万単位と言われています。口腔顎顔面領域の機能性、審美性治療に用いる濃度では、全身性に副作用が発現する可能性はとても低いと言えます。また、30単位までは動脈注射をおこなっても安全であるとの学術報告があり、適正濃度、適正注射の範囲である限り、口腔顎顔面領域には安全な治療と言えます。
しかし、BTX-A製剤は、安定剤として、ヒト由来のアルブミンやゼラチンが使用されています。アレルギー反応が生じる可能性を含め、血液製剤と同様の注意で注射をおこなっています。
製剤の廃棄
失活、廃棄
BTX製剤は毒薬指定薬剤です。薬液に触れた器具は0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液に5分以上浸して失活させ、その後に医療廃棄物として処理しています。
治療概要
1. 注射位置のマーキング
治療に必要な部位には、神経や血管、支持靭帯、脂肪、骨、筋肉などがあり、解剖学的な要素を含めて皮膚ペン(マーキングペン)を使用して治療部位を特定し、副作用を防止するためのマーキングをおこないます。
マーキングした後に、患者様に図示した治療概要をご説明しています。
2. 体位
患者様は歯科用診療ユニットにお座り頂きます。患者様の状態に合わせて座位または水平位、半座位で処置をおこなっています。体位が変わると脂肪や支持靭帯、皮膚や筋肉の位置は変化します。顔面骨と皮膚軟組織の位置関係の変化に注意して治療をおこなっています。
3. 消毒
アルコールによる消毒は、BTX製剤の効き目を弱めてしまう恐れがあります。効力を最大限に発揮させるために0.02%クロルヘキシジン液を使用しています。
4. 疼痛対策
BTX治療の痛みは、針が皮膚に刺さる瞬間の痛みと、薬剤を注入するときの痛みの2段階に分類できます。刺入時の痛みの軽減には、4つの工夫をおこなっています。
1. 使用する針を痛くない針を使用します。いわゆる無痛針(蚊の針と同じ構造)を使用します。針の太さを32G、33G、35Gのように細くしています。
2. 表面麻酔を併用します。高濃度の表面麻酔剤ペンレステープ®など、60%以上の高濃度リドカインのテープタイプの局所麻酔剤や、EMLAクリーム®などの高濃度リドカイン軟膏タイプの局所麻酔剤を前処置として使用しています。
3. 注射直前に注射部位に対してアイスパックを使用しています。冷却による疼痛軽減効果だけでなく、皮内出血予防として有効です。
4. 自動注入器を使用した注入速度をコントロールすることで、疼痛軽減対策は完璧です。
5. 注入部位、刺入深度、注入量
BTXは症状の原因の筋肉に注射することが大切です。副作用の発現を予防するには、周囲の筋肉にまき散らさないような細心の注意が必要です。注入部位に使用する製剤濃度は事前の診察の際に決定します。
患者様一人ひとりの筋肉の走行や厚み、位置は異なります。注入部位の筋肉の位置に合わせて刺入する注射針の深さを決めます。目的の筋肉とその周囲の組織の水平的、垂直的、立体的な解剖学を習熟し、注射する位置と刺入深さを把握することが大切です。
ボツリヌス治療のコラム
ボツリヌストキシン(BTX)治療には特に慎重な治療が必要な理由は、注射治療は外科的手術と異なり、薬剤を注入するだけの治療ですから、刺入している針先は見えないので、手探り治療になるブラインド手術、ブラインド処置になるためです。
担当するドクターは頭の中で患者様の人体解剖をイメージして該当部位への注射をおこなうことになりますから、知識だけでなく経験が大切な治療方法と言えます。
経験が浅いと、知識だけに頼らざるを得ず「あてずっぽ」的な治療にならざるを得ません。しかし、経験が浅いドクターも患者様のために試行錯誤を加えながら経験をしていくことで一定の安定した治療をおこなえるようになります。ドクターのセンスと治療に対する姿勢が問われる治療と言えます。
6. 注意事項
1. 注射部位から針を抜いた時に出血がある場合は、すぐに刺入点を圧迫止血し、冷罨法をおこないます。およそ1分間は動かさないで圧迫します。ただし、強く押しすぎると注射した薬液が周囲組織へ漏れてしまいます。圧迫による薬液の周囲組織への漏洩に注意が必要です。
2. 一回の注射治療でも、注射針はこまめに取り換えます。針の刃先は繊細で、皮膚に一回当てただけでも、「刃こぼれ」を起こし、再度刺入する時は、1回目の刺入よりも痛くなります。当院は常に新しい針に交換しています。特に咬筋など筋膜が厚い場合や骨に当たった場合は損傷は激しく刃こぼれを起こしています。1回でも骨にあたった場合は必ず交換しています。
7. 薬剤の効果
ボツリヌス注射の効果は、注入した後2~3日したら効果が発現します。そしてその後、1~2週間後にしっかりとした効果が現れます。その後は3か月~6か月間の間、効果が持続します。
8. 注入方法
1mlのシリンジを使用して、0.01ml単位の注射をおこなっています。0.01ml単位の注入は知識、経験、実績を必要とします。また、注入手技には慣れが必要です。カンファークリニックでは、自動注入器を使用することで、安全で確実な注射治療をおこなっています。目標とする施術結果は患者様の希望や状態、症状によって決定しています。当院では初回の投与は少ないほうが安全であると考えており、できるだけ副作用、副反応、併発症状がないように努めています。
口腔内の詰め物やかぶせ物治療、入れ歯やブリッジ、インプラント治療、歯周病による歯の動揺、顎関節症による機能改善治療、咬合高径の低下による顔面、とくに口周囲の形成治療、形態改善しわ改善治療は機能性と整容性のバランスと妥協点を見出すことが重要です。
ボツリヌス治療のコラム
使用するマーキングペンにはさまざまな色が用意されています。解剖学的デザインに応じて、筋肉や神経、動脈、静脈、支持靭帯、骨、脂肪など部位別、組織別に色を変えて使用しております。
例えば、血管は赤色、筋肉は緑色、神経は黒色などのように色分けをして人体の解剖構造をデザインします。注射治療前に患者様へ説明し、患者様自身にも治療の理解を深めて頂く努力をおこなっています。