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Le FortⅠ型骨切り術【出っ歯セットバック手術】

Le FortⅠ型骨切り術とは

上顎の形態改善、咬合機能の維持、向上を同時に図るための上顎骨体の手術である。
骨片の移動により、顔貌、外鼻形態、E-Lineの改善をおこなうことができます。

この手術術式は、先人の幾多の試行錯誤と検証、失敗、改良を経て、1962年Obwegeer先生により上顎後退症状(下顎前突症の一部を含む)の改善(上顎を前に出す)のために確立された術式です。現在は原法にオシレーティング骨のこぎりを使用した骨切りや超音波切削器具を使用した骨切り手術、チタン製ミニプレートやポリ乳酸性吸収性ミニプレートを使用した骨接合法が加えられ、後戻り対策、術後骨片の安定対策、手術後治癒期間の短縮が図られており、しゃくれ顔、鼻翼の陥凹、ほうれい線が深い場合などに適応しています。

また、単独または上顎分節骨切り手術を組み合わせ、後方移動も可能になったことから、出っ歯の改善(後方移動、ひっこめる)、臼歯の咬合高径の改善(嚙み合わせ)、外鼻形態のバランスの改善(鼻翼縮小、鼻尖形成、鼻中隔延長)も可能となりました。

上顎の手術について

上顎は顔の中心部に位置しており、手術を計画する場合には上顎骨のみを考えて、上顎を前に出したり、後ろに下げる治療計画では、顔全体のバランスが取れません。歯や歯槽骨を含めて上顎骨を顔全体のバランスに適合させることが重要です。

また、手術後のかみ合わせも機能的な面として忘れてはなりません。上顎歯列弓は馬蹄形であり、上方はお鼻とつながっており、立体的な構造しているので、正面からだけではなく、横から見てもバランスの良い形に整える必要があります。また顔の中心部にあるパーツであるため、笑った時などの可動時と静止時のバランスや、額や眉間、鼻、下顎、顎先などの顔の各パーツと調和を図る必要があります。

上顎の手術としては、全上顎骨移動術があります。上顎骨のみの移動にはLeFortⅠ型骨切り術。鼻上顎複合体移動にはLeFortⅡ型骨切り術です。眼窩、鼻、上顎複合体移動にはLeFortⅢ型骨切り術を適応します。口腔機能と顔面形態の融合を図ることが最も重要です。骨切り骨片の可動範囲や可動距離、移動方向、上下、左右、傾きと咬合高径を勘案し、下顎との同時手術、併用手術が適応となることが多いです。

手術に際しては翼突静脈叢ならびに顎動脈、顔面動脈の損傷に細心の注意が必要です。咬合、顎関節、整容治療を同時におこなうためには、歯科医学、口腔外科学、顎顔面外科学、美容外科学の統合的な知識と技術、経験が必要です。

骨切りによる歯髄神経の断裂は、骨切り直後から側副路で保持され、歯髄内は生活する。有髄神経はWaller変性を生じるが、次第に再生し、正常知覚に回復します。

Le FortⅠ型骨切り術のポイント
骨格性出っ歯に対して上顎前突改善手術Le FortⅠ型手術により、顔面形態のバランスのよい美しいお顔、お口もとを目指すことができます。
カンファークリニックでは、上顎手術としてLeFort型骨切り手術、上顎歯槽骨分節骨切り手術、鼻尖形成術・耳介軟骨移植・鼻中隔延長、オトガイ形成、Vライン形成など、鼻と顎と口もとのバランスに配慮した施術を行っています。顔面形態は個人差があり、目、鼻、顎と口もとの改善すべき点が組み合わされています。術式の選択は経験を積んだ医師の判断を参考にして頂き、カウンセリングで一緒に検討しています。

Le FortⅠ型骨切り術がおすすめの方

  • 出っ歯が気になる
  • 口が閉じにくい
  • 歯がいつも見えている
  • 顔に立体感をだしたい
  • 鼻と人中とバランスを取りたい
  • 梅干ししわがある
  • ガミースマイル

Le FortⅠ型骨切り術の概要

施術時間 約60分
治療期間 日帰り
麻酔 全身麻酔
ダウンタイム 大まかな腫れや内出血が引いてくるまでに、2~3週間程度です。
組織が完全に落ち着くまでは3ヶ月~6ヶ月程度です。
※いずれも個人差があります。
利点 ・適応範囲が広い
・手技が簡単
・確実な効果
・咬合と顎関節運動の相互位置づけが可能
・骨切り骨片内の歯の損傷がない
・軟組織損傷がない
・顔面整容の改善が大きい

適応範囲が広く、本法単独手術のみならず、下顎後退手術の併用により、
あらゆる変形症の改善が可能である。翼突静脈叢ならびに顎動脈の損傷に注意が必要である。
根尖から5mm以上離れた骨切りをおこなうことにより、歯髄内神経は一時的に切断されるが、
歯髄内血流は側副路で維持され、歯髄神経は生活する。
有髄神経としてWaller変性をおこし、再生して正常知覚に回復する。
適応例 ・上顎後退症状前方移動距離は10mm~15mmまたは前後径の1/3以内
・上顎左右非対称症例
・左右方向の回転症例
・鋏状咬合の改善
・上顎歯列弓幅径の縮小、拡大
・上顎歯列弓狭窄症例
・軽度上顎前突症例
費用 2,500,000円(税抜)
下顎後退手術と上顎前進手術の選択基準
・顎口腔機能と顔面整容の観点から判断することが最も重要である
・顎関節症状の患者では、咬合と顎関節機能の調和が得られやすい術式を選択する
・中心位と中心咬合位の一致を改善対称の一要因とする場合には下顎後退手術を選択する
・中顔面の左右非対称症例にはLe FortⅠ型骨切り手術を選択する
・鼻中隔湾曲、鼻尖形成、鼻中隔延長手術を併用するような症例の場合には、Le FortⅠ型骨切り手術を選択する
・咬合平面の左右的傾斜を示す症例にはLe FortⅠ型骨切り手術を選択する
・上下顎歯列弓幅径の異なる症例には、正中分割を併用したLe FortⅠ型骨切り手術を選択する
・副鼻腔炎の存在する症例、蓄膿症症例にはLe FortⅠ型骨切り手術を慎重に適応する

Le FortⅠ型骨切り術で期待できる効果

  • 骨格的な出っ歯の改善
  • 口元が引っ込む
  • 口もとが上品になる
  • 短期間で出っ歯を治せる
  • ごぼ口改善
  • 梅干ししわの改善
  • 前歯のかみ合わせの改善
  • 矯正歯科治療ではならなかった口もとの改善

Le FortⅠ型骨切り術の流れ

1. デザイン

モデルサージェリー、CBCTによる診断、光学模型による手術シミュレーションをおこない移動する範囲、移動によって変化する顔貌、咬合を決定します。神経、血管の走行に留意してデザインをおこなう。

2. 麻酔

全身麻酔下において、上顎左右第二小臼歯間の唇側、口蓋側粘膜に対して、歯科用キシロカインカートリッジ(2%リドカイン、1/8万エピネフリン含有)を使用して局所麻酔をおこなう。

3. 切開

歯肉頬粘膜を左右対称に伸展させ、上唇正中粘膜にダブルフック鈎を使用して口腔前庭を展開する。

15番メスまたは電気メスを使用して、口腔前庭最深部から外側10mmに左右第一小臼歯間にわたる粘膜切開をおこなう。粘膜切開は粘膜をしっかりと伸展した状態で垂直におこない、切り込まない。切開面から上唇挙筋群が透けて見えたら、ガーゼを用いて手指で切開面の剥離伸展すると、骨膜に至る。可及的に骨膜面を露出させたのち、上顎骨前壁に垂直となるよう15番メスを用いて骨膜切開をおこなう。

4. 剥離

骨膜剥離は骨切りに必要な上下粘膜面の10mm程度の幅でおこない、縫合時の縫い代を確保する。切開が歯肉に近づけば、最終縫合が難しくなるだけでなく、口腔前庭が狭くなり、可動時の口唇の変形を惹起することになるので、注意が必要である。

前鼻棘の露出と明示、梨状孔下方部の剥離と明示をおこなった後、下鼻道内の骨膜をフリルを用いて剥離する。鼻粘膜はできるだけ温存し、出血がないよう注意する。鼻粘膜の術中管理は術中、術後出血の軽減や予防、気道確保に重要である。後方は上顎結節から翼突上顎結合までトンネル状に骨膜剥離をおこなう。翼突窩の上方部分は温存し、翼突静脈層を傷つけないように注意する。

5. 骨切り

水平骨切りは歯列弓に平行に、根尖から5mm以上離して設定する。骨片の移動や骨切り線のマーキングを骨面におこなう。梨状孔外縁から始めるがまずはフリルを挿入して、鼻粘膜を保護する。

骨切りにはストライカー社製、ジョンソンアンドジョンソンデピューシンセスコッドマン社製、中西NSK社製、エースクラップ社製などを使用するか、上顎骨は脆弱なため、超音波切削機械も有益である。上顎結節には逆ぞり鈎を挿入し、翼突窩を保護する。梨状孔側縁を離断し、上顎洞前壁、側壁を通過し、できるだけ翼突上顎結合部に近くで止める。

6. 鼻中隔軟骨切離

経鼻挿管チューブの損傷を防ぐために口腔内からガーゼを挿入して保護する。玉付き鼻中隔マイセルを鼻中隔軟骨下方に挿入し、マイセルの重さと手拳で進める程度で分離が可能である。

7. 翼突上顎縫合の切離

プテリゴイドマイセルを結合部分に挿入し、口蓋粘膜に手指を当てて、軽く槌打をおこなう。ボーンソウにより、翼突上顎縫合部分近くに骨切り線が来ている場合には、軽く槌打することで切離が可能である。プテリゴイドマイセルの先端が結合部分にあたっていることを確認し、マイセル自体を上方に挿入してはいけない。刃先の応力が内上方に働くようマイセルを保持し、槌打する。槌打による、マイセルに伝わる骨の感触と音の変化により、骨切りの進行程度は把握することが可能である。

8. 骨片の可動化

骨切離が終了したら、前鼻棘に親指をあて、人差し指を口蓋粘膜を支えるようにして、上顎骨を下前方に押すと、鈍い音とともに上顎が動き、骨切離線が開拡する。周囲組織を観察し特に鼻腔粘膜の剥離を確認しながら、ゆっくりと下方へ開拡をおこなう。鼻腔後方部分は開拡と共に視野が明瞭になるので、必要に応じて剥離子を併用し、可動かせしめる。翼突上顎マイセルを上顎結節後方に挿入し、骨片が前方に移動するようにマイセルをよじると上顎は前方に移動し、口蓋粘膜をaxialとした有茎粘膜弁の状態を呈する。

可動化が困難な場合はどこかの骨切りが不十分である。最初に戻って骨切離を確認する。無理をして力任せにダウンフラクチャーをおこなうと、思わぬ方向や位置で骨折を招く。手指で上顎をつかみモデルサージェリーによる予定位置への復位を確認しながら、遊離可動化状態の確認をおこなう。

9. 移動骨片の血流確保の確認

粘膜切開、剥離、骨切離、骨片の可動の一連の流れの中で、上顎前歯部唇側歯肉の色調による血流観察をおこなう。血流確保は本術式の要であり、移動という有茎骨移植であることを忘れてはならない。自然の状態で歯肉の色の変化がないか?(血流不全に陥っていれば、チアノーゼ色を呈している)可動骨片の移動状態による色調の退色の有無、予定位置での色調の回復状態や退色状態は予定固定位置での血管の圧迫や断裂が疑われる。そのほか、切開面や骨切離面の出血の有無も血流判断には重要である。血流不全が疑われる場合には温罨法やヘパリンの局所注射、骨片の移動位置の変更をおこない、それでも改善しない場合には直ちに閉創し、移動骨片に対するランダムパターンによる血流確保と安静を図る。

10. 仮止め顎間固定

モデルサージェリーの予定位置に移動骨片を復位させ中心咬合位で顎間固定をおこなう。

「移動位置の確認と顎関節、咬合、整容のバランス」

関節窩、下顎頭、咬合、整容のバランスを調和させることが最も重要である。中心位と中心咬合位の一致は顎間固定の状態でオトガイを誘導し、下顎頭を関節窩内の最後上方位に誘導する。上顎の垂直位置関係の決定は、安静位空隙を超えない。骨切離線はブレードの切り代があることを想定したうえで上方移動並びに下方移動を決定する。必要に応じて骨移植をおこなうが、プレート固定による骨片の安定が図られるため、近年は骨移植の必要性は少なくなった。

11.骨片の固定、プレート固定

移動骨片の位置確認ができたならば、プレートによる固定をおこなう。骨壁の厚い部分は梨状孔外側縁と上顎骨頬骨下稜である。ライビンガーミニプレート、シャンピーミニプレート、シンセスミニプレートなど各メーカーから様々なチタン製プレートが供給されている。プレート固定はリラップス、後戻りの防止、術後顎間固定が不要などの大きな患者メリットがある。

12. 骨移植

Obwegeserの原法の術式では上顎洞前壁、翼状突起と上顎結節との間に骨移植が行われていたが、現在では症例を選んでおこなわれており、良好な結果が得られている。

13. 縫合

術野には生理食塩水を用いて洗浄し、出血の有無を確認する。生理食塩水の洗浄は出血点の確認には有益である。出血点があれば、バイポーラや止血ノミを用いて止血する。ブラウジングの場合には、ボスミンガーゼやトラネキサム酸ガーゼや軟膏ガーゼを併用する。上顎の手術における唇側正中切開を加えた場合の閉創におけるもっとも重要なことは上唇正中の変位がないように注意しなければならないことである。この点、口唇口蓋裂手術の経験者は優位である。Cupid bowと顔面正中の一致や上顎中切歯との一致、瘢痕拘縮予防のためのボリュームの改善縫合、ガミースマイル、歯肉露出の予防縫合、Cカール形成縫合を口輪筋や上唇挙筋群の配置、配列、走行を考慮した縫合をおこなわなければならない。骨膜、筋層、粘膜の各層縫合は必須である。

14. 術後

ご休憩いただき、問題がなければご帰宅いただきます。

手術後について
創部の圧迫 手術日の翌日までテーピング圧迫をおこないます。手術日の翌日にご自身で除去して頂きます。
術後の通院 定期的な通院は不要です。患者様のご希望により、診察をしております。
抜糸 溶ける糸を使用します。手術後1か月ほどで自然になくなりますので、ご来院は不要です。
洗顔 圧迫用テーピング部位以外は当日より可能です。
入浴 軽めの入浴は当日から可能です。シャワーも当日から可能です。
メイク テーピング除去後、手術の翌日から可能です。
その他 手術後7日間は、喫煙をお控えください。

 

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