下顎分節骨切り術【受け口セットバック手術】
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下顎分節骨切り術とは
下顎分節骨切り術は、下顎の形態を改善させ、咬合機能の維持、向上を同時に図るための下顎骨歯槽骨の手術である。
手術上の利点は手術が短時間で終了する点(1時間程度)。下顎小臼歯5番以降の臼歯の状態は変化しないため、手術直後より従前の臼歯部咬合機能が維持されており、経口摂取による食事が出来る点が非常に大きなメリットである。また、部分的な骨移動のため術後矯正は必ずしも必要がない。
欠点としては、後方移動をおこなうための空隙、隙間が必要なため、第一小臼歯または第二小臼歯どちらかの抜歯が必要であること。馬蹄形形態の歯列弓を中間で移動させるため、歯列弓形態の不調和から上下、左右などの隙間ができる。また、手術はあくまで歯槽骨とその歯を一塊として整容的、機能的に適切な位置に後退させることが本手術の目的であり、上下左右1本1本の咬合状態、当り方、かみ合わせの状態を外科手術でおこなうには限界がある。その意味では、術後に歯科矯正を行うことは推奨している。
手術は、下顎の左右小臼歯を支えている歯槽骨の一部を切除、摘出し前歯6本分を一塊として移動する方法である。切開は口腔内のみであり、外側に傷はない。唇の裏側の切開は3cm程度である。骨削除量は5mm前後で後方移動をおこなう。セットバック手術は下顎のみを考えるのではなく、額~鼻~口元~顎先までのバランス、E-Lineイーラインを大切にし、診断する必要がある。術前の頭部エックス線規格レントゲン、セファロ分析、咬合模型による嚙み合わせ診断、CBCT光学模型診断を基に、見た目とかみ合わせのデサインをおこない、詳細な治療方針を立てている。同様な治療方法として、歯列矯正があるが、目的や結果、仕上がりは全く異なる。カンファークリニックとして自信をもってお勧めできる治療方法といえる。
手術について
下顎分節骨切り術式は世界的に見ても、Kole法がもっとも一般的な手術方法と言えます。
カンファークリニックでは、犬歯の位置状態、第一大臼歯の咬合状態を診察し骨格性下顎前突状態でありながら、奥歯のかみ合わせを変化させる必要のない患者様に適応しています。奥歯のかみ合わせの変化が必要な場合は、下顎枝垂直分割骨切り術や下顎枝矢状分割骨切り術を適応しています。オトガイの突出を合併している場合には、オトガイ後退、短縮術なども併用し、下顎(オトガイ)全体をバランスよく後退させる手術をおこなっています。
側貌である横顔の美しさは、額~鼻~口元~顎先にかけてのバランスが大切です。
患者様の個性を失わず、自然で機能的な仕上がりを目指すことに重点を置き、E-lineとともに理想的なお顔を表す審美三角と機能的なかみ合わせも含めた診断、デザインをおこないます。下顎前突、受け口、反対咬合、しゃくれている患者様は、顎(あご)が長いことも多く、その場合は同時にオトガイ形成短縮手術を併用しています。
顎間固定(上下の歯をワイヤーで結んで固定)する必要はありませんので、手術当日からお食事が可能です。また、すべて口の中からの施術ですので、顔に傷跡が残りません。
下顎分節骨切り術のポイント |
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しゃくれ顔、受け口、反対咬合に対しておこなう下顎セットバック手術はE-Lineを整えて、美しい口もとを目指すことができます。 カンファークリニックでは下顎歯槽骨分節骨切り手術とともに、オトガイ形成、鼻中隔延長などを組み合わせ、鼻と顎と口もとのバランスに配慮した施術を行っています。術式の選択は経験を積んだ医師の判断を参考にして頂き、カウンセリングで一緒に検討しています。 |
下顎分節骨切り術がおすすめの方
- 骨格性下顎前突
- 上の歯と下の歯の真ん中が合っていない左右非対称患者
- オープンバイト、開咬症の改善
- 反対咬合
- しゃくれ顔
- 歯列矯正をしないで前歯をひっこめたい
- E-Lineを整えたい
- 受け口
- 早く治したい
- 歯列矯正ではかみ合わせ改善が不可能な患者の歯列矯正前処置として
下顎分節骨切り術の概要
施術時間 | 約60分 |
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治療期間 | 日帰り |
麻酔 | 全身麻酔または静脈内鎮静法 |
ダウンタイム | 大まかな腫れや内出血が引いてくるまでに、2~3週間程度です。 組織が完全に落ち着くまでは3ヶ月~6ヶ月程度です。 ※いずれも個人差があります。 |
費用 | 1,200,000円(税抜) |
下顎分節骨切り術で期待できる効果
- E-Lineが整う
- 唇と顎のバランスが整う
- 顔の幅が小さくなり、かわいらしい顎になる
- 小顔になる
- オープンバイト(開咬)が治る
- 顎先がお顔の中心になる
- 額、お鼻、唇、顎のバランスが整い、柔らかい女性的な印象になる
- 反対咬合、受け口、しゃくれ顔が治りスッキリした印象を目指せる
下顎分節骨切り術の流れ
1. デザイン
手術によって移動する範囲を決定します。咬合状態、E-Line、神経、血管の走行に留意してデザインをおこないます。
2. 麻酔、抜歯
全身麻酔にて無意識の状態で左右下顎第二小臼歯から前方の唇側、舌側歯肉、粘膜に対して、歯科用キシロカインカートリッジ2%リドカイン1/8万エピネフリン含有局所麻酔薬6アンプルを用いて、ローカルアネステジアをおこなう。
3. 抜歯
小臼歯鉗子や直ヘーベル、曲ヘーベルを用いて小臼歯を抜歯する。
咬合模型、光学模型によって手術前のモデルサージェリーによって後方、下方、上方移動量を確認し、パノラマレントゲン、CBCTなどの術前検査ではオトガイ孔の位置確認をおこない、左右の第一小臼歯、または第二小臼歯の抜歯を両側または片側でおこなう。
4. 切開、剥離
15番メスまたは電気メスを用いて、左右下顎犬歯間の歯肉唇粘膜移行部から5mmほど下方に水平粘膜切開をおこなう。粘膜下にオトガイ筋、下唇下制筋並びにオトガイ神経束を確認することができる。粘膜下で顔面筋上のガーゼなどを使用し、徒手的に軽く剥離したのち、オトガイ神経束の走行に注意しながら、オトガイ筋をメスにて切離する。同部から骨膜剥離子を用いて、粘膜下に見える下唇下制筋とオトガイ神経束を外側に伸展しながら骨膜まで鈍的な剥離をおこなう。骨膜に達したのち、骨膜は15番メスを用いて切離し、骨膜下に骨切離に必要な範囲幅(10mm程度)で剥離をおこなう。
水平切開部分の遠心末端部分より抜歯部位の歯肉に向けて歯肉の温存を図るため、骨膜下にてトンネル状に剥離をおこなう。縦切開は不要である。
抜歯した歯の舌側粘膜は、歯槽部の深さで骨膜下に剥離をおこなう。オトガイ神経束は粘膜骨膜弁内に保護されており、オトガイ孔の確認など不要な剥離は控えることで、術後の神経鈍麻、麻痺を予防できる。
5. 骨切離
骨切離予定線を設定する。水平骨切離線は下顎犬歯根尖から5mm以上下方に設定する。骨膜下で剥離をしているため、歯槽骨の厚さによっては、下顎犬歯根尖相当部は目視確認が可能であるが慣れない間は、抜歯した小臼歯の長さを参考にするとよい。
縦の骨切離線は骨切離と同時に後方移動に必要な骨切除をおこなうため、2線の骨切離線となる。後方移動量を超えた骨切除は後に骨片間の隙間を生じ、下顎犬歯、下顎小臼歯の傾斜、垂直性骨吸収、垂直性歯周炎、歯の脱落を招来する。本手術ではこの部分の骨切除量の決定と手術操作が要である。モデルサージェリーをおこない、細心の準備と注意が必要である。唇側、舌側の切除幅が異なるため、切除される骨形態は台形となる。
水平骨切離並びに縦の骨切離には、サジタルソーを用いる。 水平骨切離はモノコルチカルにとどめ、縦の骨切離は下顎犬歯の遠心側に注意しながら近心から始める。縦の近心骨切離はバイコルチカルにおこない、次に縦の遠心骨切離をおこなう。水平骨切離を縦の遠心骨切離部分に延長し、2線におこなった縦の骨切離部分の水平骨切離はバイコルチカルにおこなうと、縦の骨切離部分はエンブロックに可動し、骨切除がおこなえる。この状態になってから、水平骨切離部分の他の部分の舌側皮質骨を切離すると可動予定セグメントとして可動化する。
6. 骨片の復位と咬合の確認
モデルサージェリーの予定位置に可動骨片を復位させ、咬合状態を確認したのち、バイトプレートやシーネ、オクルーザルスプリントを使用し再度、咬合状態の確認と骨片の固定をおこなう。また、整容として重要であるオトガイ唇溝の状態やオトガイ先端、下口唇、鼻尖とのバランスを確認する。見た目は額からお鼻、唇、オトガイ先端までのバランスと、E-Lineのバランスを確認している。
7. 骨片の固定
0.4mmステンレスワイヤーやチタンプレート、マイクロプレート、PLLAプレートなどを使用し、理想形態に整えたのち、骨片の固定をおこなう。
8. 縫合
術野を生理食塩水にて洗浄し、止血を確認する。ブラウジングがあればボスミンガーゼやトラネキサム酸ガーゼ、軟膏ガーゼを使用し、骨内からの出血に対しては、止血マイセルやモノポーラを使用する。
骨膜、筋層、粘膜の各層縫合をおこなう。抜歯した部位の唇側歯肉と舌側歯肉は抜歯した隣在歯の歯周組織の保護に不可欠である。
9. 術後
ご休憩いただき、問題がなければご帰宅いただきます。
10. 手術後のケア
ステンレスワイヤーは3~6ヵ月後に抜釘する。
歯の隙間や咬合の改善には、術後1か月後より審美補綴や歯列矯正が可能である。
手術後について
創部の圧迫 | 手術日の翌日までテーピング圧迫をおこないます。手術日の翌日にご自身で除去して頂きます。 |
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術後の通院 | 定期的な通院は不要です。患者様のご希望により、診察をしております。 |
抜糸 | 溶ける糸を使用します。手術後1か月ほどで自然になくなりますので、ご来院は不要です。 |
洗顔 | 圧迫用テーピング部位以外は当日より可能です。 |
入浴 | 軽めの入浴は当日から可能です。シャワーも当日から可能です。 |
メイク | テーピング除去後、手術の翌日から可能です。 |
その他 | 手術後7日間は、喫煙をお控えください。 |