
アゴ短縮手術(水平骨切り、中抜き法)
アゴ短縮手術(水平骨切り、中抜き法)とは
代表的な手術法として、下記手術をおこなっています。
① 多段階水平骨切り術
② オトガイ下端削骨術+結節部斜骨切り術
短縮と同時に顎を前に出したい場合 | 水平骨切り術 |
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短縮と同時に顎幅を細くしたい場合 | ①水平+垂直骨切り術 ②オトガイ下端削骨術+斜骨切り術 |
原則的な方法は、オトガイ領域の可動域を設定し、骨切離をおこない、前方または後方、下方、上方に可動骨片を移動させる方法です。下端部分の可動骨片は、舌側に温存している骨膜、粘膜が栄養供給組織となる、有茎骨移植の考え方です。
中抜き法は切除骨を決定し、2線で骨切りをおこなったうえで、中間に生じた可動骨片(遊離骨片)を切除する方法です。水平骨切り法の亜型、変法といえます。2線の骨切りをおこない、中間骨片を切除する方法では、切除骨片を除去する様子が、達磨(だるま)落としのように中を抜いてくるため、中抜きと称されています。中抜きをする場合は切除予定幅で上下2線の水平骨切りをおこない、中間骨を切除して(中抜き)、最下方の骨片を上方の非可動骨片(母床骨)に接合し、固定します。固定にはPLLAプレート、チタンプレート、ラグスクリュー、ステンレスワイヤーを使用します。患者様のご希望により、骨片移動の際に短縮と同時に前進、後退を行うことができます。またオトガイ幅を狭くすることも可能です。
短縮量の目安は患者様のご希望を最大限に生かしたうえで、下口唇下端~オトガイ先端の距離を計測し、平均値に近づけるようにしています。左右オトガイ神経の位置は個人差があり、術前の検査にて切除範囲を決定します。切除範囲は20mm以上確保することも可能です。また、25mm以上の前進や後退が可能です。
手術は静脈内鎮静法または、全身麻酔下に行ないます。手術中の尿道バルーンの設置や手術後に各種ドレーンの設置は不要です。手術時間は30分から1時間ほどです。
アゴ短縮手術のポイント
オトガイの骨を切除予定幅で上下2本、水平方向に骨切りし、中間骨を切除して(中抜き)、小骨片を上方に移動し、固定します。
つまり、骨を3枚におろすということです。骨片移動は舌側の筋肉の障害を避けながら、短縮と同時に自由に前進、後退を行うことができます。この時に垂直骨切りを加えれば、オトガイ幅を狭くすることも可能です。
短縮量の目安は、下口唇下端~オトガイ先端の距離を計測して、女性では平均値の35mmに近づけるようにしています。オトガイ神経の走行位置に配慮して、最大で10mm~20mmの短縮が可能です。
水平骨切り術は、顎(アゴ)の長さを短くするだけではなく、顎(アゴ)を前後に移動させることもできる施術です。個人差はありますが、顎(アゴ)を最大10~12ミリ短く、最大8~10ミリ後退させることができる施術です。口の中からの施術ですので、外に傷が一切つきません。
水平骨切り術が、難易度の高い施術とされているのは、骨切り後の段差の修正にあります。
当院では、段差をならしていくために独自に開発した骨削りノミで、エラ(下顎角)の方向に向かって段差をなだらかにします。顎(アゴ)だけを見るのではなく、エラなど輪郭全体のバランスをみてトータルデザインを心掛けています。
セカンドオピニオン
数多くある美容整形外科で、様々な不安を感じていらっしゃる方も多いことでしょう。
当院ではセカンドオピニオンサービスを実施しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
アゴ短縮手術で期待できる効果
- 小顔になる
- フェイスラインが整う
- 顎が短くなる
- ほっそりとした顎になる
- 口もと、目、鼻のバランスが整う
- りんかくがシャープになる
- 左右対称の顎になる
- 歯列弓、咬合、歯軸方向などの口もとにぴったりの顎の形に解消される
- すっきりとした口もとになる
- 角のある顎から、シャープな顎になる
- 横顔の美しさとして、額、鼻先、顎先にかけてのEラインが整う
アゴ短縮手術がおすすめの方

- フェイスラインを整えたい
- 顎が出ている
- 顎が引っ込んでいる
- 顎が短い
- 顎が長い
- 顎(あご)が左右非対称
- 下顎(したあご)が太い
- 小顔にしたい方
- 顎の幅が広い
- 顎(あご)の角の改善
アゴ短縮手術について

施術時間 | 約60分 |
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治療期間 | 日帰り可能な手術です。 |
麻酔 | 全身麻酔 |
腫れ具合 | ★★★☆☆ |
ダウンタイム | 大まかな腫れや内出血が引いてくるまでに、2~3週間程度です。 組織が完全に落ち着くまでは3ヶ月~6ヶ月程度です。 ※いずれも個人差があります。 |
料金(税抜)
水平骨切り術 800,000円
手術後について
創部の圧迫 | 手術日の翌日までテーピング圧迫をおこないます。手術日の翌日にご自身で除去して頂きます。 |
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術後の通院 | 定期的な通院は不要です。患者様のご希望により、診察をしております。 |
抜糸 | 溶ける糸を使用します。手術後1か月ほどで自然になくなりますので、ご来院は不要です。 |
洗顔 | 圧迫用テーピング部位以外は当日より可能です。 |
入浴 | 軽めの入浴は当日から可能です。シャワーも当日から可能です。 |
メイク | テーピング除去後、手術の翌日から可能です。 |
その他 | 手術後7日間は、喫煙をお控えください。 |
アゴ短縮手術の流れ
① 切開
口腔内切開は、15番のメスを用いて、左右下顎犬歯両側を結ぶ口腔前庭粘膜で、歯肉頬移行部よりも唇側寄りにオトガイ神経を傷つけない位置におきます。
② 剥離、伸展、反転
粘膜切離断面から左右のオトガイ神経線維束を確認しながら、オトガイ筋の筋層を確認します。左右両側には下唇下制筋、直下には口輪筋の筋線維を目視したのち、オトガイ筋は切離し、下唇下制筋や口角下制筋、口輪筋は剥離、伸展をおこない温存させます。メスにて組織剥離をおこないながら深部に至ると、下顎骨骨膜に至る。骨膜は15番メスを用いて切離し、粘膜骨膜弁として下顎正中の下縁から、オトガイ孔後方まで骨膜下剥離を行なうと、下顎骨の後方までトンネル状に剥離ができ、観察ができます。オトガイ領域全体を露出させるべく、周囲組織を剥離、伸展、反転をおこないます。
③ 骨切り線の設定
骨切り線の設定に当たっては、まずは正中線の明記をおこないます。この操作は術前に必須であり、骨切り後では、術前の正中線がわからなくなります。術後の正中、左右差の改善のためのメルクマールは非常に重要です。骨切り線の決定にあたり、左右のオトガイ孔を目視し、必要に応じて下顎骨内オトガイ神経移動術、下顎骨外オトガイ神経伸展術を併用します。この操作により、手術後の神経麻痺を回避できます。オトガイ孔から6mmほど下方に設定する術式もありますが、この基準では、患者様の希望する短縮距離に満たない場合が多く、あくまで参考値にとどめるべきであると考えています。
粘膜骨膜弁自家骨移植、移動骨片としての可動骨片は、薄すぎれば、術後に骨膜吸収を起こすため、顔面形態が変化してしまいます。患者様の希望する前進や後退、延長に必要な厚さを確保しております。5mm以上を確保する場合は、可動骨片と母床骨との接触に注意をしております。骨髄面の接触が少ない場合には、可動骨片に対する手術後の栄養供給が悪くなるため、トレパンバーを用いて、デコルチケーションを併用しています。この操作により、移動骨片の血液供給、酸素供給が十分確保でき、術後の骨壊死や骨髄炎の予防の一助となります。中抜きする切除骨片は、患者様の希望する短縮距離に応じた切除をおこなっておりますが、ここで重要なことは、骨のレベルの切除距離と筋肉や脂肪、皮膚が戻った時の変化量との差を見越した形態形成が必要な点です。経皮的観察が重要です。切除量と短縮量は比例関係にあるものの、骨切除量がそのまま見た目に現れることはありません。
また、下顎側方ラインにできるギャップ(段差)は、トリミングが必要なレベルとトリミングは不要で骨膜吸収に任せるレベルは異なります。この点を見誤ると、余計な侵襲によって、神経損傷のリスクや手術時間の延長につながります。以上の点を注意すれば、切除量は20mm以上の中抜きが可能となります。術前のサージカルシミュレートと実際の術中判断のギャップを埋めていくことが重要ですが、これは各ドクターの経験年数や手術実績に頼ることになります。
④ 骨切離、骨切除
骨面を露出せしめ、術野の確保がおこなえたならば、骨切り操作に移ります。骨切りは、脳外科、整形外科などでも使用されるボーンソーを使用します。ピエゾサージェリーを使用する場合もあります。サジタルソー、レシプロソーを併用します。舌側骨皮質骨の切離は、まさに皮一枚の骨切りですが、最終までのボーンソーで切離をおこなわず、手前で止めて手指で骨折させると骨切削器具による軟組織の損傷が防止できます。おせんべいに切り込みを入れて、割る様子に似ています。
⑤ 可動骨片の位置決定
短縮のための骨切除後、可動化させた切離骨片の位置は、骨把持鉗子を用いて術前に設定した予定位置へ移動させ、下顎体との適合性を確認します。この時点で余剰皮膚の状態、マリオネットラインの状態など経皮的な観察が必須です。軟組織を元に戻して、オトガイの形態と顔面との調和、バランスの確認をおこないます。
⑥ 母床骨と移動骨片の固定
可動骨片をリプレースし、決定した位置に仮止め固定をおこなう。仮止め固定をしなければ骨片は不安定であり、経皮的観察もままならない。骨片の固定は切離、移動させた骨片の初期的には固定の維持、中長期的には骨癒合、栄養供給、血液供給にはきわめて重要である。骨片が周囲軟組織の筋組織、支持靭帯、脂肪や皮膚などの軟組織の術後変化に抵抗するために必要な固定力が必要となる。前方移動の固定は軟組織の圧迫、抵抗力が加わるため、固定方式の配慮、検討が必要となる。固定には、吸収性PLLAプレート、チタンミニプレート、チタンマイクロプレート、チタンラグスクリュー、ステンレスワイヤーを用いている。非吸収性固定材料は患者様のご希望があれば、術後6ヶ月以降に抜釘手術をおこなっているが、そのまま放置しても半永久的に人体に影響はない。
⑦ 可動骨片と母床骨との段差処置
リプレースさせた可動骨片の固定後、下顎体と骨片の移行部は、段差やギャップが生じやすい。剥離、伸展した軟部組織を元の状態に復位させ、経皮的に触診や視診をおこなう。骨面に生じた段差は、トリミングが必要な状態と不要な状態がある。皮膚の上から骨鋭縁が突起として触れない程度に削骨、トリミングをおこなう。この場合はストレートドルを使用し、エッグ型、バレル型、ラウンドバーを用いる。
⑧縫合と閉鎖
生理食塩水を用いて、術野を十分に洗浄する。止血には点滴用抗凝固剤含有の圧迫ガーゼを使用している。止血確認後、骨膜縫合と筋層、縫合は吸収糸を使用する。抜糸は不要となる。およそ1か月で吸収し、生体内に分解される。骨膜縫合では、手術後の骨の治癒には非常に重要となる。骨膜は非常に薄く、骨に栄養を与える役割がある。この膜の縫合は吸収までの期間が比較的長く、およそ吸収まで120日の糸を使用する。つまり骨面の治癒、癒合まで糸が残存し骨膜を補強し、骨の治癒、癒合をサポートする。骨膜縫合の次は筋層の縫合に移る。筋層の縫合は手術後の表情の邪魔にならず、左右差が出ないような張力のある縫合糸の選択と縫合方法を選択している。
手術後に顔の表情が不自然になったという場合は、この部位の縫合の一工夫が足りないと考えている。手術後の表情の動きと連動するような縫合術式を選択すべきである。とくに骨に骨膜があったように、筋肉にも筋膜が存在する。この筋膜と各筋肉の線維と線維の走行を確認しながら縫合することによって、手術後の表情、仕上がりが格段に変化する。最後は粘膜の縫合である。口腔内の縫合はドレープやテーピングによる、圧迫や固定ができない。このため、手術直後から飲食をして頂くためには、可動性の確保が必須となる。粘膜縫合は粘膜の可動性を確保した状態で、粘膜と粘膜が接している状態を維持できる程度の縫合糸の張力、弾性力を選択している。粘膜は治りが早い組織ですので、縫合糸が溶けるまで期間は30日から45日の縫合糸を使用している。縫合糸が口の中の動きを妨げないよう、比較的短い、やわらかい、違和感の少ない縫合糸を選択する。
⑨ 術後
1時間ほどご休憩いただき、問題がなければご帰宅を頂けます。